卒論体験記No.14 2018−2020

 リサーチトリップの前書き

 去年(2018年)留学を終えてオランダを出た時から、来年帰ってこようと決めていた。仲のいい友だちが、大学のあったマーストリヒトにいるうちに、もう一度訪れたいと思っていた。友だちがみんなマーストリヒトにいなくなってしまえば、僕にとってオランダに帰ってくる意味はほとんどない。留学中の時間を完全に再現することはできないけれど、そこにある空気感とか友だちとの時間を、働き始める前に自分に焼き付けておきたいと思ったのだ。

 

 オランダを訪れるチャンスは、夏休みの9月(8月はオランダも夏休みで、大学生は実家に帰るため、マーストリヒトは完全に空っぽになる。)と卒業直前の春休みの2月3月があった。お金を稼ぐ時間を考えれば、卒業直前の方が楽だったけど、僕の中の何かが早く行けと叫んだ。結果的にこれは英断だった。春休みは、コロナでことごとく吹っ飛ばされたから。同じゼミの後輩はオーストリアに行く飛行機が出発してから、国境がクローズになり、飛行機が関空に引き返してきた。他の友だちもことごとく卒業旅行の計画がぽしゃっていた。(2月に僕がインドに行けたのは、かなり奇跡的だ。僕の機転が呼んだ幸運であることもつけくわえておく笑)

 

 余談だけど、僕はオランダに行く直前アルバイトをクビになっている。当時僕はオランダに行く資金を稼ぐために大学近くの定食屋で働いていた。この時すでにアルバイトの収入を見越して、オランダに行くための飛行機や宿を抑えていた。さらに、オランダ行きに関しては親から一切お金を借りないと決めていた。スケールは小さいが、ローンのような大きな支出を抱えながら、職や収入を失う大きな恐怖を味わった。頭が真っ白になりながら過ごしたこの時の2週間は、今でも時々思い出す恐ろしい記憶として残っている。

 

 ちなみに後から聞いた話だと、この定食屋のマスターは、その日の気分でアルバイトをいきなりクビにする、気のおかしい人(本人談)だった。年に5人以上もクビにするらしく、僕の友だちも前触れもなくクビにされていた。僕は幸運にも留学生の友だちに紹介してもらって、直後に新たなバイトを見つけられた。そのバイトは、働いている人もいい人ばかりで、収入もよっぽど多かった。結局留学生のチューターをしていたのに、留学生には助けられてばっかりだった。日本でもオランダでも、素敵な人たちに会えて、本当に僕は幸せだと思う。

 

 オランダにいる間から、僕はずっとEU外のヨーロッパに強い興味を持っていた。オランダに抱き合わせるように、僕は東欧のセルビアマケドニアを旅程に組み込んだ。常に新しい場所を切り拓き続けなければ、人生も旅もエキサイティングにならないはずだ。