現地語で見る景色 ローカルな世界を求めて③ 太陽に集う人々 フランス、ニース

 ニースの玄関口はコートダジュール国際空港だった。早朝僕は空港近くのバス停で、ミラノから乗ってきたバスを降りて、フランスに足を踏み入れた。バスに乗っていたのは6,7時間ぐらいだったと思う。だいたいバスにこれくらいの時間乗っていればある程度の睡眠を取ることができる。ただこのバスでは国境でのパスポート検査が2度もあった。ちょうど中間あたりで、そのために起こされたので、睡眠時間が真っ二つになってしまった。朝5時くらいにバスを降りたこともあって、ものすごく眠かった。僕は空港のベンチで仮眠することにした。

 

 1時間後、警備員に話しかけられた。フランス語でどうも横になって寝るなということを言っているようだったので、今度は行儀よく座って寝た。それでも警備員がやってきて、今度は椅子を叩いて起こした。不親切なやり方が頭にきたけど、ここはニースで、たしか2年前にテロがあった場所だ。僕はしぶしぶ空港を出た。

 

 ニースの空はすでに明るくなっていた。路線バスに乗って、数キロ離れたニースの街を目指した。

 

 すぐに海が見えた。バスは、弓なりにできた海岸のすぐそばを走る。朝早くでも海岸を散歩している人がたくさんいた。コートダジュールの景色が早速僕の目に入っていた。

 

 ニースはフランスでもトップクラスのリゾート地だ。多くの人が高級ホテルに止まったり、自分の別荘に滞在したりする。とはいえ、僕は貧乏旅行なので、いつも通り安宿のドミトリーに泊まった。部屋のドアを開けると、6人のルームメイトに迎え入れられた。ドミトリーをもう何度も使っているけど、やっぱり好きには慣れない。異国で寂しさが薄まるという良さはあるものの、一番無防備になる寝ている時間を赤の他人と共有することになるので、全く気が抜けない。それと、着替えや夜中の荷物の整理にも気を使うので、なんだか疲れてしまっているように思う。毎回シングルルームを探すけど、結局安い宿は大抵ドミトリーだ。お金がないときしかドミトリーに泊まることもないので、これも若いうちの貴重な経験になるのだろう。

 

 僕は宿に荷物を置いて、海岸に行くことにした。観光でも人に会うでもなく、ただそこに集う人々と同じ空気を吸って、雰囲気を感じてみたい。何もしないというのは、案外贅沢なものだ。僕なりのバカンスをしようと思った。