一人旅で見えるもの 

 見たこともない世界が見たいと思って旅に出る。日頃の人間関係から離れたいと思って、遠くを目指す。遠くに行けば行くほど、違う世界になればなるほど、いつも自分の身近にあるものを欲しているような気がしている。

 

 一人で旅をするというのは、すごく孤独だ。特に外国だと、言葉が十分に通じない。初めて行くような場所だと、土地勘がなくて、不安になる。そうした瞬間を重ねることで、自分が本当に求めているものが少しずつ見えてくる。

 

 初めての国に着いて、朝ホテルで目が覚める。一人で旅をしていれば、特に話しかける人もいない。自由な旅であれば、時間通りに行動するということもない。出来るだけ、頭を自由な状態にして、自分の心の趣くままに歩いてみる。

 

初めての街なら、全てがゼロからのスタートだ。行きつけの店も、顔なじみの人もいないので、自分が欲するものを足していくプロセスだ。それは、美味しいご飯屋さんかもしれない。ジョークを言って笑い合うような知り合いかもしれない。僕は、心が近いような関係の人を求めていた。昔から、自分と全く違う環境で育った人と深く関わってみたいと思っていた。旅先でそういう気心知れた関係の人ができるのは、いつも新鮮で嬉しい。

 

 数日間滞在した街も出るとき、ふとその街での時間を振り返る。0から始まったこの街の滞在で、僕はどんな思い出を刻んだのだろう。それほどたくさんのものを積み上げることはできない。でも、その0との差が知らない街で自分自身が欲して積み上げたものなのだろう。