旅の終着駅に向かって Diary No.14
インドの旅も終わりに差し掛かっていた。ゴアの3日目、最終日はムンバイへの移動日だった。夜近郊の駅から夜行列車に乗って、ムンバイを目指す。それまで時間があったので、ホテルをチェックアウトして、僕は近くのビーチを見に行くことにした。
ホテルのスタッフのお兄さんはとても気さくだった。僕の顔を見て、自分とそっくりだと言っていた。確かに顔が濃いあたりは僕と似ていた。彼はインドについての感想を僕に聞いてきた。「インドは面白い。どこを見ても違う景色が広がっているから。毎日毎日決して退屈することはないし、2週間の滞在がまるで1年以上もいるように感じる。」彼も同感のようだった。彼は34歳だけど、未だにインドがどんな国か分からないらしい。やはりインドは魅惑の国だ。
あまり遠くには行きたくなかったので、午前中は彼がおすすめしてくれたバガビーチに行くことにした。彼曰く、僕のホテルの近くのビーチは、どうやら年配者向けのビーチだったらしく、若者はそのバガビーチに集まるそうだ。僕はヒッピーに会えることを期待して、そこに向かった。バスを乗り継いで、40分ほどかかって到着した。
残念ながら、ヒッピーはいなかった。それでも、ビーチにはかなり活気があって人もかなり多かった。フレンドリーに話しかけてくる人がいて、適当にYesを繰り返していたら、僕に耳かきをし始めた。ありえないくらいべっとりしたものを出てきたと言って僕に見せてきた。絶対僕から出たものではない感じで、正直気持ち悪かった。翌朝腹を壊した。
ホテルに戻って、荷物をピックアップして、駅を目指した。最寄り駅とは言うもののホテルからは50kmも離れている。電車の出発時間の6時間前に、ホテルを出た。バスを3本乗り継いで駅に着いた。びっくりするくらいスムーズに行けて、2時間以上前に着いた。
ベンチに座ってぼうっとしていると、隣に座っていた子どもが話しかけてきた。「どこから来たの?」「日本だよ」彼は外国人を見るのが、初めてなのかとてもワクワクしていた。今まで、日本人と言うと、コロナウイルス扱いされていたので、彼の素直な好奇心がとても嬉しかった。彼は英語を習い始めたばかりで、とても恥ずかしがっていた。途中から隣のお父さんが僕に丁寧に教えてくれた。お父さんは医者で、1週間の休みを利用してゴアに遊びに来たらしい。お母さんもとても親切そうな人だった。子どもに日本のお菓子をあげると、電車でお腹が空いた時にとスナックをくれた。インドに来て一番心が温まった優しさだった。
電車に乗ると、君は退屈してるだろうからと言って、インドの海軍兵が僕の目の前に座って、話しかけてくれた。彼は帰省でラジャスタンまで行くらしい。海軍に入った理由を聞くと、何か国のためになることをしたかったと答えた。僕が喉を守るためにマスクをすると、コロナはインドにはないよと笑って言った。一番大事なのは、きちんと栄養を摂ることだよ。彼の実家は農家だそうだ。彼もまた、とても爽やかな人だった。そこで寝ていると、途中駅で起こされた。チケットを見ると、僕の席は別の車両だった。
夜通し電車は走って、ムンバイに近づいていた。ムンバイ、旅の最終目的地へ。