インドの全てにイエスと言う Diary No.11

昨日のテーマは、なるべくインドとの距離を取らないことだった。そう思って、声をかけてくる全ての人の相手をして、ほとんどの申し出にイエスと言った。インドは何が起こるかわからないから、面白い。というか何事も起こりうるのだ。インドで散々聞いたフレーズに”Everything is possible in India.” がある。僕にとっては、驚くようなことがたくさん起きているのに、インド人はそれに驚くこともないし、関心すら持っていない。

 

 

火葬場の近くで、僕を熱心にパーティーに誘ってくる人がいた。「100ルピー払ってくれたら、ビールを飲みたいだけ飲ませてやるよ。」彼と彼の友人はそう言ったが、僕の第六感が彼の発する怪しさを感じ取った。適当にお茶を濁していると、彼の友人が、彼はゲイだと打ち明けた。心の中でため息をついた。ここ2年ぐらい外国に行くたびに、もれなくゲイに誘われる。インドで5回目ぐらいだ。彼は親切に近くに座っていた彼の叔父を紹介してくれた。叔父もゲイらしい。僕は火葬場を後にした。

 

 

 しばらく歩いていると、インド人の男が僕を呼んだ。彼は観光客の呼び込みをしていた。川べりに座って、歩いている外国人観光客に話しかけているらしい。彼(名前はアニルという)僕は話の内容からアニルが、僕から何かを盗ろうという意図がないことを確信した。


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▲インド感溢れる通り(2020.2.24 Varanasi)

 

 

彼は、もともとギャンブルでかなりのし上がったが、ふとしたミスで、持っていたお金が飛んでしまったらしい。それからお金に執着することがなくなったようだ。彼は親切に、船に僕を乗せて対岸まで案内してくれた。(普通はひとり400円程度取られる。)おまけにチャイを好きなだけただで飲んでいいと言って、チャイ屋に連れて行ってくれて、バタートーストまで、ご馳走してくれた。気をよくした僕は、次は僕が払うとはっきりアニルに伝えた。これがちょっとしたミスだった。アニルは、「それならバーに行こう。友だちを呼んできてもいいか?」と言った。「もちろん。」僕は答えた。気づくと、10人くらい野郎どもが集まっていた。大所帯になって、アニルご一行は、バイクで走り出した。

 

 

 バーに入った。そこからがすごかった。ビールと料理を海賊のように貪り食い始めた。夜の11時を過ぎてもなかなか、帰ろうとしないので、何度も懇願していると、12時半を回って、やっと会計を始めた。僕の支払いは5000円くらいだと伝えられた。インドの物価基準に慣れきっていた僕は、思いっきり面食らった。彼らはそんなに嫌なら1000円でも2000円でもやるよと言ってきた。払うと言った手前、それに乗るわけにもいかず、(今思えばもらっておいてもよかったけど)渋々払った。

 

 

実は宿の門限は23時だった。それを見越して、アニルに何度も帰りたいと言ったのだが、俺が主人に交渉して、開けさせるの一点張りだった。確かに宿の主人は、僕が帰った時、閉まっていた玄関を開けてくれた。ただ入ったあと、こっぱぴどく怒られた。あんな悪い奴らについて行くな。今思うと、一歩間違えば、何が起きていてもおかしくなかった。

 

不思議な体験をしたものだと思う。よく考えれば僕の旅はいつも、ギリギリのところで、なんとかなっている。